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「寂しい」の言葉で彼の気持ちを推し量った19の夜 #終電と私

終電と私

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撮影/mao nakazawa

0時が近づくにつれて、街の人々は「終電」が気になりだす。

帰ろうか、残ろうか。時計を見ながら正解を考える。甘酸っぱい思い出も、切なく悲しいできごとも、思えば全部「終電」がきっかけだった。

そんな、誰もがひとつは持っている終電にまつわる物語「#終電と私」を集めてみました。

19歳のころ、ひとり暮らしの男の家によく遊びに行っていた時期があった。

最初は何人かで遊びに行こうという話が、誰も来れなくなってしまい、人生で初めて男の家にひとりで行くことに。

大学の同級生とは言え知り合って間もなく、年齢も私よりいくつか上で、何かあったらヤバイのでは? と思いつつも、その未知の世界に私はとっても興味津々で、その敷居をヒョイっと軽く跨いだ。

その日からほぼ毎週末、いつもお昼過ぎに彼の部屋へ行き、終電ギリギリまで一緒に過ごす。

私は勝手に本を読んだり、テレビを見たり、ダラダラと自宅のようにくつろぐ横で、彼はせっせとお茶を淹れたり、パスタを作ってくれたりした。

とてもやさしい人で、私はそれに甘えて満足していた

バイクに乗せてもらったり、買い物に行ったりして、最後は必ず一緒に彼の部屋に帰る。

映画を観たり、音楽を聞いて過ごしたあと「もうそろそろ終電だよ」と教えてくれ、冬の澄み切った夜空を見ながら駅まで送ってもらった。

私たちは1日中話していたのに、まだ話すことがたくさんあった。

駅に着いて「じゃあ、またね」と挨拶を交わし、改札を通り、少し歩いて振り向くと、彼は必ず私をニコニコと見つめながら手を振ってくれた。私も笑って手を振り返した。

いつもそうだった。

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撮影/mao nakazawa

私たちは健全な関係で、男女の一線を超えなかった

駅に向かいながら、「『今日は泊まりなよ』と言うかしら?」とモヤモヤと期待する日もあった。

でもいつも、そんな話はせずに、東京の空もきれいだという話や、今度はあそこに行ってみようなど、そういう話だけで終わっていた。

けれど終電間際、改札前での「じゃあ、またね」の挨拶の時間は次第に長くなり、振り返って目を合わせると、離れがたく恋しく思うようになっていた。

***

そんなのが3か月くらい続いたある日、今日は泊まりたいとはっきり思う日があった。

「今夜は一緒にいたい」という言葉がずっと口から出かかったまま、いつも通りの時間に彼と部屋を出て、「東京も星きれいだよねえ」と同じような話をしながら駅に向かい、改札まで来たところでやっと「寂しい」というひと言が出た。

それに対して彼は「いいよ、泊まっても、どっちでも」と、やさしくニコニコしながら言った。

その瞬間、何かがハッと冷めて、いつものように「じゃあまたね」と改札を通り終電に乗った。

でも私は振り向かなかった。

それが最後に彼の部屋に行った日だった。

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撮影/mao nakazawa

私たちは、相手が自分をどう思っているかを伺うのが楽しいだけで、人間としてお互いにそこまで興味がない、ということに気が付いてしまったのだ。

恋人でもなく、体を重ねるでもなく、もはやこれは友人でもなく、そこに偶然居合わせたふたりだった。

ほかの人は欠席し参加しなかった、ふたりだけで始めたゲーム。

そっちへ行くのか、こっちへ来るのか、相手の出方や気持ちを推測するだけのゲーム。

名付けるとすれば「終電ゲーム」だろう。

これが私たちのたったひとつの、共通の楽しみだったに違いない。そしてこんな関係を、決して健全とは言えないだろう。

楽しかったはずなのに、思い出すと空っぽな感じがする。最後に部屋に行った日の、日曜の終電の車内には、私以外誰もいなかった。

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mao nakazawa
カメラマン、エッセイスト。1988年生まれ、東京都出身・在住。写真を撮ったり、文章を書いたりしています。フィルム写真とともにブログ「record of tokyo」を日々更新中。お仕事のご依頼はお気軽に。
web:cameranakazawa.com
Instagram:@_maonakazawa_
Twitter:@_maonakazawa_

>>連載「終電と私」を読む

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