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夏のメキシコへ、季節を飛び越えてやってきた。NOWHERE BUT HERE

NOWHERE BUT HERE

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世界を旅する菊乃さん

行った場所、聴いた音楽、はじめての光景、あのとき出会ったあの人…。ふとした瞬間に思い出す旅の欠片を、菊乃さんの言葉で記していきます。

そこへ行かなくても、また思い出せるように。

Nowhere but here. ここではないどこかへ。

寒くて凍えそうな日本を出てやってきたのはメキシコ。

久しぶりに成田からのフライトをメキシコシティで乗り継ぎ、カンクンへ。そして、そこからさらにバスで2時間ほどかかるトゥルムという地にたどり着いた。

家を出てから約22時間。どれだけ楽園が待っていようと、やはり長距離の移動は好きになれない。

冬の日本から夏のメキシコへやってきた

到着したのは夜だったため、シャワーを浴びてベッドに潜り込む。そのためにやってきたと言っても過言ではない、メキシコ料理も明日までおあずけ。

ワカモレの夢でもみようと眠りについたが、やはり時差ボケで朝の5時前に目が覚めた。

少し走るか、と外に出る。

まだ夜明け前の薄暗い紺色の空。

ビーチまでの道のりを4キロほど走るあいだ、ただまっすぐ伸びる道と、それに沿って生い茂る木以外なにもなかった。

ホテルに戻るころにはすっかり明るくなっていて、太陽が出るとジリジリと肌が焼ける。カラッとしていて過ごしやすいのだけど、それでもダラダラと汗をかいた。

体が少しずつ夏の感覚を取り戻していく感じがする。

✳︎✳︎✳︎

シャワーを浴びたあと、大きなタオルに包まれてホテルのベッドに倒れこむ。

朝ごはんを満足に食べたあとのコーヒーとかと同じで、昔から大きなタオルに包まれて寝ることが好きだったことを思い出す。

いつか行った旅行先のホテルに、分厚いタオル地のバスローブがあった。それをシャワーを浴びたあとに纏い、そのまま眠りについたときの気持ちよさったら。

バスローブを気に入った私は、帰国するときに持って帰ってきたのだけど、結局家では一度も使っていない。

毎日気持ち良さを感じるよりも、そのバスローブは思い出と一緒に特別にしまっておきたい気持ちが勝った。

✳︎✳︎✳︎

念願のメキシカンを食べたあとは、ホテルのプールサイドで本を読んだ。友だちにもらった本で、1985年に書かれたロサンゼルスの若者たちの話。

プールサイドでは、誰が選曲しているのか、一貫性があるようでない曲たちが流れている。

昨日はいかにもメキシコっぽい感じのインスト集、一昨日はピンク・フロイドが流れているかと思いきや、今度はFKJといった具合。

今日はアメリカのオールディーズが流れていて、ビーチボーイズの『Wouldn't it be nice』が流れる。ハッピーなメロディーで、大好きな曲だった。

太陽に照らされて体が火照り、プールにドボン。

これを1時間のうち何度も何度も繰り返すだけだったが、それだけでしあわせな気分に浸ることができた。

ローカルな屋台で飲んだジュースはなつかしい味がした

トゥルムでは自転車移動が基本だ。

タクシーももちろん走ってはいるのだけど、気軽にあっちこっち移動するのは自転車がラクだった。

セノーテと呼ばれる泉へ行ったり、おみやげ屋さんを見に行ったり。トゥルムにはかわいいカフェもたくさんあって、驚くことにヴィーガン料理がかなり充実していた。

コーヒーに入れるミルクも、ソイ、アーモンド、ココナッツミルクまであって感動。

選択肢が多いと無条件にホクホクした気持ちになる。

✳︎✳︎✳︎

大体のローカルレストランや屋台に、「jamaica」という名の謎の飲み物があった。

ラベルの付いていないペットボトルに、ブドウジュースのような赤紫色の液体が入っている。

ハイビスカスフラワーウォーター、と書いてある店もあり、あぁそういうことかと頼んでみた。

赤い色をしたハーブティーなどとよく似た味。

昔、どこかで同じような飲み物を飲んだことがあるなぁと考える。しかも私はそれが大好きで、何度も何度も飲んだ記憶が。

そうだ、何年も前にメニューから姿を消した、フレッシュネスバーガーにあったレッドジンガーハーブティーというドリンクにそっくりだ。

あぁ、あの大好きだったドリンクをここでまた飲めるなんて。トゥルムはしあわせに満ちた街だ。

本場のメキシカンは最高だ。アボカドが大量に出てくるんだもの

トゥルムも離れるまでの間、不満がひとつでも漏れたことは一度もなかった。

人々はやさしく、スペイン語を喋れなくてもみんな笑顔で話しかけてくれる。

それに加えて本場のメキシカンももちろん最高だ。なんてったって大好きなアボガドが大量に出てくるんだもの。

天気も毎日良くて、気持ちも晴れ晴れした。

また絶対戻ってこよう、最上級の気分転換をしに、ここトゥルムへ。

>>連載「NOWHERE BUT HERE」を読む

菊乃

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