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気になるのはいつも、主人公じゃなくて脇役だった

〇〇に恋してる

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小さなころから「真ん中にいる人」にいまひとつ興味が持てなかった。

戦隊モノだと真ん中のレッドより、脇を固めるイエローやグリーンが好きだった。バンドやグループアイドルも、センターよりサイドの動きが気になる。

以前、あるバンドでボーカルを務めている方に「別のバンドでベースをしてらっしゃるときがすごい好きで」と言ったら「なんでだよう」と悲しそうに言われた。

本当にすみません…でも、脇に控えているからこその輝きってあるじゃないですか!

***

マンガやドラマを見ていても、好きになるのはいつも脇役たちだ。とくに「恋愛モノ」の脇役が好き。

なぜって、ヒーローとヒロインは、紆余曲折を経たのちハッピーエンドにいたる確率が高いが、「当て馬」をはじめとする脇役たちがどうなるかは、はっきり言って未知数。

いつのまにか物語の表舞台から消えていることも多い。気が抜けない。目が離せない。そして気がつけば好きになっている。

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大和 和紀『はいからさんが通る 新装版(4)』講談社 (右上)青江冬星(右中)伊集院忍(右下)藤枝蘭丸

少女マンガの大傑作『はいからさんが通る』の当て馬といえば、ご存じ「青江冬星(あおえ・とうせい)」である。

彼はヒロイン「花村紅緒(はなむら・べにお)」が勤める出版社の編集長。

海外で行方不明になったり、帰国したと思ったら記憶喪失になっていたりする本命王子「伊集院忍(いじゅういん・しのぶ)」に振り回される紅緒を、大人の余裕でやさしく包み込む男だ。

たいていの当て馬は、とんでもなく人間ができている。「お前が別の男を好きでも構わない」とか、「いつか俺のほうをふり向いてくれればそれでいい」とか言う。冬星もそういう男だ。

しかし、当て馬はその包容力ゆえに、恋の敗者となる。なぜならヒロインが、やすらぎよりときめきを選ぶから。癒しよりドキドキを選ぶから。

なんでか知らんが、そういうことになっている。解せない。「やすらぎ、いいじゃん、最高じゃん」…これが脇役大好き人間の本音である。

***

私なんて「ザ・脇役」が好きすぎて、当て馬ですらない脇役に熱を上げてしまっている。

『はいからさんが通る』でいえば、紅緒の幼なじみである「藤枝蘭丸(ふじえだ・らんまる)」。

ヒロインの幼なじみで、物語の序盤では紅緒と駆け落ちまでしようとするのに、結局のところ、紅緒の理解者、つまり「いい人」のままでおしまい。

しかし、自分が紅緒だったら、そんな蘭丸とのんびり付き合いたいものだ。本当に、負け惜しみでもなんでもなく、忍より冬星より蘭丸が好き。

だって、人生のほとんどは、平々凡々たる生活じゃないか。その生活のなかでドキドキハラハラしていたら心臓がもたない(と、やすらぎ派は考える)。

それよりは「いい人」と茶飲み友だち的によろしくやっていくほうがいい。

万事がこの調子なので、「ヒロイン・本命王子・当て馬」以外の登場人物が魅力的に描かれている作品に惹かれがちだ。

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高野苺『orange』双葉社 (左)萩田朔

たとえば高野苺さんの『orange』だったら、迷うことなく「萩田朔(はぎた・さく)」を推す。主要登場人物でありながら、ヒロインとの恋にまっっっっったく絡んでこない朔のマイペースっぷりがたまらない。

「みんなが好きになるような女の子を好きにならない」男の子には、珍味のような旨味がある。

朔は、イケメンで勉強もできるのに(そこをみんなに評価されてないのだが)、峰竜太が出る夕方の番組を観たくてソッコー帰宅したりするところに好感が持てる。

誰がどう見てもヒーローでしょ、という男の子を好きになるより、わたしだけがこの人のよさをわかっていると思えたほうが、己の「好き」がオリジナルになる気がして、心地いいのかもしれない。

なんか、自分がとてつもなく面倒くさい女に思えてきたぞ…。

『逃げるは恥だが役に立つ』はもともと原作のファンで、ドラマも見ていた。

みんながガッキーと星野源を見て「ムズキュン!」とか言っているときに、私が注目していたのは、藤井隆さんが演じていた「日野秀司(ひの・ひでし)」である。

みなさん覚えてますか? 家族サービス大好きな日野さんですよ! 思い出して!

脇役好きは、なろうと思ってなれるもんじゃない。気づいたらなっているし、直しようがない。

せっかくフィクションを見ているのに、せっかく非日常を楽しむチャンスなのに、なぜかちょっと地味な脇役に恋してしまう。

なんだか老人になっても「『花より男子』だったら西門さんか美作さんでしょ!」「『のだめ』だったらオーボエの黒木くんに決まってんじゃん!」とか言ってそうで怖いが、そういう仕様なのだ。笑って諦めよう。

トミヤマユキコ

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