行動を起こす源──。それが原動力。

世間からは「なんで?」と思われることでも、本人に聞くときちんと理由がある。そんな個人の「原動力」に迫ります。

「生まれたのはもともと御茶ノ水。それから1〜5歳まで代々木上原に住んでた。そして神保町に越してきて、大学までずっと水道橋や秋葉原付近が地元でした。母方の実家が本屋で、親族は古美術書店で本屋一族なの。ちょっと商人気質かも」

──Junkoさんって華やかなイメージだから、取材場所に神保町をあげてくれたときはすごく意外だった。

「そう、本当は神保町とか秋葉原のほうが落ち着くんですよね。みんなからすると観光スポットかもしれないけど、私にとってはすごく慣れ親しんだ場所」

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──親戚が本屋をしていたそうだけど、Junkoさんは本好き?

「うーん、そんなに好きじゃない(笑)。本屋の孫なのに。まあ、それでもほかの人よりは本を買ってもらいやすい環境だったし、読んでるほうだと思うんですけど。小説家やエッセイストの友だちからは、本屋の孫っていう環境をすごく羨ましがられますね。本屋で働いてたおばあちゃんをお母さんと迎えに行って、よく閉店後の暗い本屋でこっそり読んだりしてました」

──閉店後の本屋なんてなかなか行けないから楽しそう!

「うん、すごく楽しかった」

──おばあちゃん子だったの?

「母よりは、おばあちゃんとおじいちゃんのほうが一緒にいる時間は多かったかな。朝早起きしたときに、両親はまだ寝てたんだけど、おじいちゃんとおばあちゃんはすでに起きてたからよくお話してた。おばあちゃんが新潟出身で、干し芋とかを焼く習慣があったの。それを焼いてもらうのがすごい好きだった」

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──いいね。

「私、外見からだと華やかっぽいイメージを持たれることが多いけど、どっちかっていうと地味なんですよね。大学も芸大だったから、まず真面目じゃないと入れないし。大学時代、青山も原宿もほとんど行ったことがなかった」

──なるほど。Junkoさんって、いま肩書きでいうと?

「一応『アーティスト』って言ってます。でも、仕事をいただく種類の幅が広いので、めんどくさくて『アーティスト』って言っちゃってる部分もあるんですよね(笑)。ライターみたいなことをしているときもあるし。でも、自分的には作るほうを優先させたいと思ってて、どんな仕事でもイマジネーションが沸くときだけやるって決めてます」

──いまは何を作ってるの?

「作品を作るのはお休みしてて、いまは売れる商品、読者の手に届けられるモノを作りたいなって思っています。生産しやすくて、一般的に取引しやすい商品。あんまりそういうものを個人では作ってこなかったから、まずは実験的に始めてみて、様子を見ようと思って。爆発的に売れたいってよりは、長く運営できるものがあってもいいかな」

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──可能であれば、いまの構想を聞いてもいいかな?

「いま考えてる限りだと、ファッションというよりは、ライフスタイルに寄った商品を展開したい。最近、今治タオルの工場の方々と知り合って、一緒にものづくりをしていきたいなって思ってます」

──今治タオルは有名だよね。きっかけは?

「ニューヨークの学校に通っていた友人が日本に帰ってきてて、私の誕生日にお祝いしてくれたんです。で、話してたら、その子が『来月今治タオルの工場行くんだ』って。『え、めっちゃ楽しそう。私も行きたい』ってノリで言ったら、『いいよー』って言ってくれた。それで、実際に行って、何日間か工場のご家族と一緒に過ごしたの。綿花の畑から染色や織機も案内してくれて、ご飯まで作ってもらって」

──うん。

「私が『なんか一緒にものづくりやってみたいなー』って呟いたら、先方もちょうど新しいことやりたかったみたいで、いいじゃん! ってなったの」

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──そういうところから新しいものが生まれるんだね。

「そうそう。私も勉強しつつ、ちょっとずつやっていけたらいいなって思ってる」

──Junkoさんは自分のサイト「KAWAIILABO TOKYO」も運営してるけど、立ち上げたきっかけは?

「んー、どこから話そうかな(笑)。えっと、大学のとき、課題で架空のファッションブランドや布をテーマにした作品をいくつか作ってたことがあったんです。別に『服を作る』っていう課題じゃなかったんだけど、私は好きで勝手に服まで作ってて。ロゴデザインとかパンフレットがテーマだったりしたんだけど」

──パンフレットまで作るなんて凝ってるね。

「でも、芸大って男の先生ばかりだし、ファッションに興味のある人があんまりいなくて、つまんないなって思ってた。大学院で留学も考えたんですけど、交換留学の枠がちょうど空いてなくて、待ってると何年も経ってるし、お金もかかるしで、結局あきらめた。それで、大学院に入ってから、それまでやってた予備校の講師のバイトを辞めて、ショップ店員とモデルのバイトを始めたんです」

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「そのとき、初めて撮られる側になって、ポージングの勉強しなきゃって思って雑誌を買うようになって。で、『sweet』を買ったときにファッションブロガーコンテストが開催されてたんです。当時は日本でまだファッションブロガーがあまり認知されていないころだった。ブロガーだったらファッションについて勉強できそうだし、写真も好きなように撮れるしっていうので、『ファッションブロガーいいじゃん』って思って、応募するために『KAWAIILABO TOKYO』を作ったんですよ」

──それがきっかけだったんだ。

「そしたらコンテストでファイナリストに残ることができて、『sweet』のファッションブロガーになれるチャンスをもらえた。そのおかげで、いろんな企画とかタイアップページに参加させてもらえました。こっちとしては、芸大を卒業してこれからどうしていこうっていうタイミングだったから、現場を見れて、編集、ファッション、モデルの知り合いも増えて、お仕事もいただけてちょうど良いタイミングでしたね」

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──それで、いまは自分の好きなものや興味のあることをアップしてるんだね。ところで、なんでサイト名に「TOKYO」ってついてるの?

「私自身がすごく『東京の女の子』なんだと思うんですよね。それは大学に入ったときに気づいたこと。私、ずっと都内で育って、幼稚園から私立の女子校にいて、大学だけ芸大を受験したんです。大学に入るまでは、まわりはみんな東京の子ばかりでそれが当たり前だったから、なんも疑問を持っていなかった。でも大学に入って、地方の子たちがいっぱい集まってて、自分の価値観に対して『それおかしくない?』って言われることが多くて。そこで『やべ、自分のほうが少数派だ』って気づいた。でも、逆にそれが自分の個性なんだろうなって思ったんです」

──「KAWAIILABO TOKYO」を立ち上げてからけっこう経つと思うけど、続けられるモチベーションは?

「モチベーションかあ...。実際、途中でものすごく飽きるんですよ。もうやめてもいいかなって思うこともある。途中は惰性でしたね。でも、いまだに『KAWAIILABO TOKYO』きっかけでお仕事をいただけたり、自分のポートフォリオみたいな部分もあるので、形を変えながら発信を続けようと思ってます。また近々、『KAWAIILABO TOKYO』が進化する予定です」

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──そうなんだ

「記事を作るうえで、読んでいる人たちのことも最近になって考えられるようになった。もともとはブログという個人的なものからスタートしたから、『こんなの本当に人が読んでるの?』っていうところはあって。でも、ずっと続けていると街で読者の人に声をかけられる機会もあって、海外からオファーが来たり、海外のテレビ取材があったり、『本当にいるんだな』って(笑)。読者に出会って初めて、ちゃんと読んでくれている人のことを考えなくちゃダメだなって思った」

──もともとブログっていう私的なものから始まった「KAWAIILABO TOKYO」が、いまでは公的なものになっているわけだね。じゃあ、Junkoさんの人には言えないような思いや考えはどこで発散させてるの?

「前はSNSでの自分と実際の自分が違っていてそれが嫌だなって思ってたけど、もはやそんなことも思わなくなってきたかな。だから、自分の気分や体調によってSNSやサイトが影響されることはなくて、淡々としてる。私、わりと気分転換上手らしくて、すっごくムカついても次の日には機嫌良くなってるタイプなんですよね」

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「何か嫌なことがあったとき、20代のころは『もっと誰か助けて』って、発散したい感じだった。でも、結局は自分でしか解決できないから、誰かに言いたい、訴えたいっていう感情よりも、30代になってからは自己完結するまでがんばる、みたいな(笑)。嫌なことがあった瞬間は昨日よりも悪くなったように感じるけど、昨日よりもいまを良くすれば気にならなくなるなって思ってます」

──ファッションについても話を聞きたいな。服はどこで買ってる?

「服はけっこう展示会でつけちゃうことが多いんだけど...。今日着てるのは、『AKANE UTSUNOMIYA(アカネウツノミヤ)』ていうブランドのもの。服によって、子どもっぽくなりすぎたり、色っぽくなりすぎたりするので、そこらへんのバランスはマメに調整してます」

──すごく素敵! 今日Junkoさんと話していて、クリエイティヴな欲がすごくあるなってひしひしと感じた。

「私、開拓するのが趣味なんです。ファッションブロガーをおもしろそうって思ったのも、当時日本で前例がなかったから。いまはファッションブロガーっていう存在が日本でも広まっちゃったし、有難いことにお金ももらえる仕組みもできてきたから、じゃあ次また新しいところはないかなって開拓したくなるんです。落ち着きがないの(笑)」

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──でもその落ち着きのなさが仕事につながってるんだもんね。海外に行きたいっていう願望はないの?

「前はすっごく憧れてたんだけど、最近はあんまり思わなくなっちゃった。ていうのは、日本って何かを作ったり始めたりするのには、いちばん環境がいいんですよね。材料も手に入りやすいし、生産力も高いし、変な表現だけど、土日以外はみんな会社で働いてるし。こんなことは世界に出てみたら通用しない話。ニューヨークに住んでいる作家の友だちのところにも何度か会いに行って様子を見てたんだけど、『これ、ニューヨークに住むと大変だな ー』って思って。いまはインターネットで世界中とつながれるんだから、それなら日本で活動して、必要なときにニューヨークでもどこでも行くっていうスタイルでいいかな。もちろん海外に住んでみるっていう経験はおもしろそうだけどね」

──これからはどうしていきたい?

「今後は、とりあえずものづくりをうまく軌道に乗せながら、もっと作家活動したいなって思ってます。熱中するとパワーはあるほうだから、好きなことをやるのがいちばん大事。商売にも興味があるし、表現にも興味があるの。ブロガーで吸収したことを生かしてまずは商売をしてみようって思ってる」

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──年齢なんて関係ないよね。結婚についてはどう考えてる?

「世間的に多い結婚するタイミングって、まず27歳で、その次が30歳でしょう。それを過ぎると、あんまり焦るっていうことがなくなってくるの。でも、それまでがけっこう大変だった。もともと結婚願望が小さいときから無いんだけど、結婚って別にいくつまでにしなくちゃいけないってものじゃないし、とくに仕事のスタンスによってぜんぜん違う。その辺の感じも含めて、女の人で『何かをしたい』って思っている人と、いまの社会の常識との兼ね合いが、すごく大変だなって思うな」

──まだまだ働く女性には厳しい環境なのかな。

「結婚して働いてる女の子の話を聞いてみても、もっと働きたいのに『子どもが小さいから早く帰りなさい』『良い母親でいなくちゃいけない』みたいなことを言われるから腹がたつって。女性は男性が作った会社に無理に属する働きかたじゃなくて、良い意味で片手間で働くというか、掛け持って働けたらいいのになって思う。女性のほうが、いろんなことを同時にこなす能力は高いと思うから。そういう働きかたをする人が増えるといいなって思うし、少なくとも自分はそういう風にやっていきたいなって思ってます」

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撮影・取材/グリッティ編集部