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「きもい男の子」から「うざいオカマ」に昇格できたの。おつねの原動力

原動力を聞く

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「きもい男の子」から「うざいオカマ」に昇格できたの。おつねの原動力

行動を起こす源──。それが原動力。

世間からは「なんで?」と思われることでも、本人に聞くときちんと理由がある。そんな個人の「原動力」に迫ります。

──おつねさんは、2016年に日大芸術学部のミスコンに出場したんだよね。きっかけは?

「うちの大学のミスコンは『普通じゃないことが普通です』っていうキャッチフレーズを掲げているんですけど、歴代の出場者を見たら、黒髪に白いワンピースに...みたいな子たちばかりだったので、ずっとつまんないなーと思ってたんです。そんなときに、芸術祭の実行委員をしている友だちと『普通じゃない大学なんだから、普通じゃないミスコンをしようよ』って話になって」

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──うん。

「『じゃあ私がミスコンに出て、もしファイナルに残ったらめっちゃおもしろくない?』て思って、エントリーしてみたんです。で、気づいたらファイナリストに残ってました。ほかの出場者たちも、いかにもミスコンっぽい子ってよりはかっこいい女の子のほうが多かったですね」

──実行委員の「ミスコンを変えたい」っていう意向が反映されたんだね。結果はどうだったの?

「結局、グランプリにはなれませんでした。うちの大学、グランプリしか発表しないで、あとはみんな準グランプリっていう扱いなんです。だから自分のこと『私、ミスコンで準グランプリだったんだよ』って言ってます(笑)」

──ミスコンに出てみて、どうだった? 楽しかった?

「楽しかったです。ミスコンに出たからこそ学べたこともありました。いくつかのメディアに取り上げていただいたんですけど、なかには批判的も意見もあって。SNSで『同じ男でももっときれいなやついただろ』みたいなコメントもあったり」

──失礼だね。

「うちの大学だと、私の存在は『あり』とされていて、受け入れてもらえてたんです。だからこそ、今回ミスコンに出て世間の声を聞けたことで、井の中の蛙にならずに済んだ。だから、批判の意見もありがたいんですよね。Twitterのバッシングは、エゴサーチして1個ずつファボしてます(笑)」

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──強い(笑)。ところで、おつねさんってメイクしてるけど、コスメどこで買ってるの?

「海外のコスメが多いかな。口紅を変な色にしたいときには、最初にワセリンをぬってアイシャドウをのせたりします。口紅よりもアイシャドウのほうが発色がいいんですよね」

──アイシャドウを! そんなテクがあるんだ。

「あと、基礎化粧品には気を使っていますね。せめてデパコス(デパートコスメのこと)を使おうって(笑)。化粧水って質より量っていうので、めっちゃバシャバシャしてます。肌がもう吸えない〜ってなるまで(笑)」

──昔から女性的なものが好きだったの?

「そうですね。うちは女性が多い家庭で。お姉ちゃんたちがとにかくたくましいんですよ。男らしいというか。それを見て育ってたんで、自分は逆におしとやかになっていって...。だから昔から女性っぽいところはありましたね」

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──そうなんだ。

「私、小学生のときからちょっと変わってたみたいで、友だちがいなかったんです。田舎だったので、まわりと違う子は輪から外そう、みたいな風潮があって。そんな私を見た両親は、いじめられてるって気付いたらこの子は傷ついてしまうと思って、月曜日から日曜日まで習いごとを入れたんです。だから、私はいじめられてるんじゃなくて、忙しいから遊べてないんだって思い込めてました」

──学校以外の世界が用意されてたんだね。

「そう。でも、中高一貫の中学校に進学したときに、やっぱりまわりとは少し違っていたんで、高校の先輩からの圧力があって。それから、少し学校に行かない時期もありました。そのとき、ちょうどテレビがオネエブームで」

──あったね、そんなブーム!

「それをたまたまテレビで見たときに、私もいっそオネエくらいまで振り切ったほうがおもしろいのかなって思って。それで、中3からオネエキャラで学校に行き始めたんです。最初は『おい、オカマ』とか言われたけど『あんたオカマよりブスね』とか言い返したりして(笑)。"きもい男の子"から"うざいオカマ"に昇格できたの。それから怖いものはなくなりました」

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──なるほど。東京にはいつから来たの?

「東京には大学から来ました。勉学としてアートを勉強できる大学に入りたかったんですけど、田舎だとなかなかなかったんですよね。私は映像とかショウビジネスとかエンターテインメントを学びたくて、そうなったときに五美大のなかでいちばん勉強したいことを勉強できるのは日芸だな、と思って、日芸を目指しました」

──それでいまは映画学科で映像を学んでいるんだね。どんな映画が好き?

「どうせ映画学科ならかっこよくフランス映画が好き、とか答えたいんですけど、私ぜんぜん好きじゃなくて(笑)。だってわけわかんないじゃないですか。普通に、女の子たちが『あの俳優さんかっこいいー!』って騒いでるような映画が好き。本来の映画の楽しみかたって、そういうものだと思うんですよね。いくらカット割りが美しかろうが、映像が美しかろうが、『売れてない=おもしろくない』っていうのが私の自論です。売れている映画を批判したがる人もいるんですけど、売れてるものは理由があって受け入れられてるのであって、ね」

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「あとは『チョコレートドーナツ』っていう映画が好き。ちょうどジェンダー論争が過激だった1980年代を題材に作られたものなんです。あるゲイカップルがダウン症の子を養子にして育てるっていう映画。いろんなマイノリティが詰め込まれてて、考えさせられます。ひと箱くらいティッシュパック使っちゃう」

──自分ではどんな映像を撮るの?

「自分自身もジェンダーとかマイノリティをテーマにすることが多いですね。私、まわりに明るいって言われるし、自分でもハッピーな人間だと思ってるんですけど、不思議なことにハッピーエンドの映画が作れないんですよ。重い感じが多い。この間は近代アートみたいなものを撮ってみたくて、きれいな女の子に花を持ちながら街中を歩いてもらいました。そして、ホームレスの方とか、ポイ捨てされたゴミとかを映しながら、それと同時に花が枯れていっちゃう...っていう映像を作りました」

──いまはちょうど卒業制作の時期なのかな?

「そうですね。うちは卒業論文と卒業制作があって。論文はもう提出し終えました。制作のほうは企画書は作ったんで、あとは構成を固めて撮影する感じです」

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──就職活動もしてるの?

「はい。けっこうみんな面接緊張したって言うんですけど、私は楽しいんですよね。初めての人と会えるじゃないですか。もしかしたらこの人と働くことになるのかもって考えると超楽しい。もしかしたら将来一緒にお酒を飲むかもしれない人が、目の前で真面目に『志望動機を...』とか言ってると思ったらおもしろくて」

──面接を楽しめるなんてすごい! 人が好きなのかな?

「そうですね。世のなかに似てる人はいても同じ人って絶対にいないじゃないですか。だから、新しい人と会うのがすごく楽しい。嫌だなって思う人だって楽しいです。『こんな人いるんだー! 変なの!』って。まあ、向こうからしたら私のほうがよっぽど変わってるんですけどね(笑)」

──どういった業界に興味があるの?

「広告系です。私、大学1年生くらいのときからご縁があって芸能界で働いてて。で、働いてみて思ったのが、意外と世のなか才能ある人って多いんだなって。でも、素敵なモノや人があふれているのに、プロモーションによってはまったく日の目を見ないで終わってしまうことが多くて、それってもったいないなって思うんです。だから、自分がいろいろな形でプロデュースできるようになったら、もっといろいろな才能をプッシュできるのかな、って思ってます」

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──そうだね。

「映像って、そのなかでも手軽に見てもらえる手段だと思うんですよ。たとえば、電車一駅乗るときも、車内で流れている映像を観ている人多いと思うし。YouTube観ようと思えば広告映像が流れてきますし。5秒で人の心を動かせるのは映像だと思うんです」

──卒業論文はどんなことをテーマにしたの?

「映画におけるセクシャルマイノリティの描かれかたとその移り変わり。新旧のいろいろな映画をとりあげながら考察してます」

──おつねさんが映像と向き合うときには、つねにセクシャルマイノリティへの意識が根底にあるんだね。

「そうですね。若い子の自殺率を見たときに、やっぱり理由としてあげられるのはセクシャルマイノリティであることが多いんですよね。世のなかにとってセクシャルマイノリティを"特別なもの"っていう認識をしてほしくない。女の子、男の子、ジェンダー、みたいな感じになってくれたらって思います。そのためには、たとえばレインボーパレードのようにド派手にやるのもいいと思うんだけど、そもそもみんなジェンダーの基礎を知らないと思うんですよね。だから、私の作品や活動を通して、少しでも興味を持ってもらって、自分で検索してもらえたらうれしい。人から教えられたものってなかなか頭に残らないけど、自分から求めたものって忘れないものだから」

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取材・撮影/グリッティ編集部

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