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マイナーなジャンルで生きること。ゲームのピコピコサウンドで自分を表現する女子、TORIENA

マイナーなジャンルで生きること。ゲームのピコピコサウンドで自分を表現する女子、TORIENA

アーティスト──。

そう聞いただけで、自分らしさを体現している人、というイメージが浮かんできます。

チップチューンアーティストのTORIENA(とりえな)さんもそう感じる人のひとり。作曲やアートワーク、ライブなど、作品全体に関わる活動を自身で行うアーティストです。

すべてを完璧にこなしているように見えるTORIENAさんですが、意外にも「自信なんてひとつだけあれば充分。24時間なんでも完璧にがんばらなくていい」ということを教えてくれました。

ゲームのピコピコサウンドがチップチューン

201705_toriena_02.jpgTORIENAさんが活動している「チップチューン」とは、自身も「まだまだアンダーグラウンド」と語る音楽ジャンル。

イメージしやすいのは、ひと昔前のゲームボーイやファミコンゲームのようなピコピコとしたサウンドです。

ゲームボーイやファミコンなどのなかに入っている、内蔵チップ音源で出る音を使って作曲することを誇りに思う気持ちから、チップチューンというジャンルは生まれたそう。

チップチューンのサウンドは、専用のソフトを使って、ゲームボーイが出す音で作曲することが主流。ですが、やっている人にしかわからないような心構えやルールが存在しています。

悩みぬいた結果なのに、通じなくて悔しかった

201705_toriena_04.jpg2012年からチップチューンの活動を開始したTORIENAさん。

楽曲の原点は、チップチューン特有の心構えが反映されたものでした。ゲームボーイのみでの作曲を2〜3年ほど続けていたそうです。

Black Dance Hole by TORIENA

──ポップスなどと比べてマイナーなチップチューンというジャンル。活動していくことに対して悩みはありましたか?

「18歳くらいから活動をしていて、昨年事務所に入るまではずっとひとりでした。楽曲を作ることはもちろんひとりだし、マネージャーもいないので、スケジュール管理からグッズの発注、事務作業まで全部ひとりで対応していたんです。

ひとりで活動している、というだけで雑に扱われたり、女性というだけで、「男の影響だし、すぐあきてやめる」みたいに言われたこともありましたね。自分なりに苦労して...。がんばって積み上げてきたのに、なんで冷たく言われないといけないんだろう? とショックを受けたこともあります」

──TORINAさんの中で、気持ちはどう変化していきましたか?

「最初の1〜2年は「音楽活動」そのものを重視していたので、Tシャツなどカジュアルな格好で、顔出しをしないで活動をしていました」

「でも、ライブを重ねていくうちに、楽曲だけではなく自分の世界観を表現したいと考えるようになったんですね。そこで、曲の世界観に合ったキレイな格好をしてライブをした方がいいと思って、ちゃんと衣装を着るようになりました」

「そうやって活動を続けていくうちに、チップチューンが大好きだからこそ広めたいという気持ちも強くなっていって。

ゲームボーイのみで作曲することは私の原点でふるさと。でも、チップチューンという音楽を知らない人が聴いたときに、せんぶ同じ音に聞こえてしまう。そうしたら、もっと身近に感じてもらいたいといと思うようになりました。

で、PCの作曲ソフトで制作した音を取り入れて曲をリッチにしたり、作詞とボーカルもはじめました。ルールにこだわっていた私にとっては苦しい選択だったけど、外に目を向けてこだわりから脱却したんです」

──TORIENAさんの変化に対して、どういう反応がありましたか?

「衣装を着ることや、ゲームボーイのみで作曲することからの脱却は、大好きなチップチューンを広めるために悩み抜いた結果です。

でも、初期の着飾らないでインストの曲をやっている私をかっこいいと思ってくれた人のなかには、「歌とか歌いはじめて、衣装を着て、アイドルっぽくなった。男にこびはじめた」と批判的な意見の人もいました」

「私は、音楽活動をしていくうえで、自分にとって意味のないことはしないと決めています」

「外に向けて自分自身を見せる努力をしよう、と考えたのは、独りよがりじゃなくちゃんとエンターテインメントとして作りたいなって気持ちがあったから。自分がいろいろ苦しんで悩み抜いた結果を、単純な視点で見られると不服というか、通じないのかぁ、って落ち込みますよね。すごく悔しかったな」

「当時、理解されなかったことは大きな壁でした。それでも、私のスタイルを認めてくれるファンも徐々に増えたことで、乗り越えることができたし、トータルで作品としてみせていくことを決意できたんです」

TORIENAというキャラクターを通して、なりたい自分を演じている

201705_toriena_03.jpg──TORIENAさんは、SNSなどでも考えなどをはっきりとした言葉で発信しています。自分の気持ちや意思を表現することは、昔から得意でしたか?

「私は、自分の気持ちを外に向けて出していけるタイプじゃなかった。というか、わりと暗かったんです。でも、心の底では、自分の気持ちをしっかりと伝えたいって思ってた、ずっと。だからいまは、TORIENAというキャラクターを通して、なりたい自分を演じている感覚があります」

「言葉で表現することが苦手だった私にとって、自分の気持ちや無意識を残しておけるツールが音楽。誰かにとってはただの電子音でも、自分にとっては感情が込められているもの。自分の音楽を聴くと、そのときの感情や気持ちがよみがえるんです。言葉より音楽のほうが、自分の気持ちを表現できるんですよね」

──音楽も含め、トータルで自分を外に向けて表現するとき、周囲の反応は怖くなかったですか?

「いまは、全然気にならなくなりました。でも、過去の私は人の目を気にしていたかな」

「批判されたことを大人になって振り返ったら、運が悪かっただけなんだな、と感じられるようになりました。攻撃的な人が偶然周りにいただけだと思ったんですよね。

しかも、目立ってなかったら興味すら持たれないはず。だから、無名のうちは批判されることはほとんどない。そこまでみんな見てないから、何かを発信する最初の一歩は心配しなくていい。批判が出てくるということはある程度、興味を持たれているってことですよね」

TORIENAのなかには自信のない私がいる

201705_toriena_05.jpg──過去のインタビューで度々「自信がない」という発言をされていて、その真意が気になります。

「自分がTORIENAをやってることには自信がある。『TORIENAがやりたいことを本当にやれてるの?』って言われたら、それは『やれてる!』って言えます。

でも、大きな目で自分を見たときに、大丈夫なんだろうか? みたいな不安を感じるんです。おそらく、TORIENAを生み出している。私のなかの自信のなさが出ているのかもしれません。でも、TORIENAである私と自信がない私と、いいバランスが取れてると考えています。

きっと、自信満々でやっていたら、冷静に考えることもしなかったと思う。嫌なこととか悩んだことがあったから、自分を客観的に見るようになったし。

"自信ない"って言葉がいけないのかもしれないですね。私は完璧主義なタイプなので、いつも現状に満足していないところがあります。

だから、いろいろチャレンジを重ねて、もっとよりよくなるためにはどうすればいいんだろう? って常に思考錯誤をして。その気持ちが"自信がない"という言葉になってしまうのかも」

インタビューをするまでは、自信がある人そのものという印象だったTORIENAさん。でも、本当は自信のない自分と自信のあるTORIENAというキャラクターで、自分を冷静に見つめていました。

自分を外に発信することはちょっと怖いかもしれない。でも、なりたい自分を演じることは、自分自身を理解して楽しむためのアイディアになる──。

人に見せなくてもいいし、見向きもされなくてもいい。もちろん、24時間がんばらなくてもいい。「私って最高!」って思える時間を過ごしていたら、自然と自信が生まれてくるのかもしれません。

TORIENA(とりえな)チップチューンガール。サウンド(作詞・作曲・編曲)&アート(イラスト・デザイン)を全てセルフプロデュースで行っている。GAMEBOY実機とDTMを使ったポップでハードな作曲を得意とし、暴れまくるスタイルが特徴。「Square Sounds Melbourne 2015(オーストラリア)」「Lucca comics&game 2015(イタリア)」出演。コナミ社、カプコン社の音楽ゲームに楽曲提供など。

撮影/玉木知哉 取材・文/GLITTY編集部

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